皆さんこんにちは。
エータ法律事務所の弁護士政岡です。
今回は、前回に引き続き、
遺言(ゆいごん、いごん)について
触れてみたいと思います。
前回、遺言には、
直筆で書く「自筆証書遺言」と、
公証役場で公証人に作ってもらう「公正証書遺言」
があると説明しました。
公証役場で作ってもらうとしても、
遺言を残す人が作成者
ということに変わりはありませんので、
自由に遺言内容を決めることが出来ます。
自由と言っても、紛らわしくて
後々の紛争の種になりかねない文章は
かえって良くありません。
公証役場では、
その点のチェックをしてくれるので
安心ということですね。
さて、遺言内容の工夫ですが、
例えば、現金や預金であれば、分けるのが簡単なので、
「幾らを長男に、幾らを次男に相続させる」
という遺言でOKですね。
では、不動産や株式があった場合はどうなのでしょうか?
不動産も株式も,そのままでは
2つや3つに分けることは出来ないことが大半です。
そこで、不動産については、
長男に1/2、次男に1/4、長女に1/4という風に、
持分で相続させることがあります。
こういう分け方にせざるを得ない場合が多いのですが、
こういった分け方だと、
「持分は相続したけど実際には長男しか使っていない」
というような場合に、
後日のトラブルが起こりかねません。
私のところには、
親が持っていた借家(他人に貸している家)を
兄弟で相続し、
片方が賃料の管理などをしていたが、
「分け前がどうも少ない」とか、
「お金に困っているから売りたいけど、片方が売りたがらない」
等といったご相談が良く寄せられます。
複数の人間で共有する形で相続させるというのは、
後々の紛争の種になりかねないんですね。
そこで、私は、
遺言書作成のご依頼を頂いた際、
不動産や株式などがある場合には、
状況が許す限り、
「不動産は売却し、残った代金のうち
1/2を長男、1/4を次男、1/4を長女に相続させる」
というように、
現金化して相続させる遺言の作成を勧めています。
また、
どうしても偏った(誰かに有利で誰かに不利)遺言に
せざるを得ない場合もあります。
例えば、
長男夫婦が何十年も同居して介護をしてくれたので、
次男よりも長男に多く残したいというような場合です。
この時、少ししかもらえない次男は、
当然、不満を抱きます。
遺言というのは、(大体の場合)
親が亡くなって子供達に説明が出来なくなってから、
当の子供たちが初めて目にします。
不利な内容の遺言書を見た子供は、
「同居していた長男夫婦が無理やり書かせたんだ」
などと思います。
そうすると、遺言が元で兄弟間の関係が悪くなりかねません。
そこで、私は、遺言書の最後に、
「付言事項」(ふげんじこう)といって、
その遺言を書いた動機だったり、
残された家族に対する想いや
お願い事を書いてもらうようにしています。
そこに何かしらのメッセージを遺すことで、
あらぬ誤解や感情的な対立を避けることが出来るのです。
このように、
遺言書の作成にも色々な工夫があります。
相続の備えとして作った遺言が
将来の身内の争いを起こさない様に、
あらかじめ、
専門家にご相談に来ていただければと思います。